【東大生おすすめ】実際に読んだ本を一挙紹介|岩波少年文庫・ブルーバックスを思い出とともに語る【中学生向け】

本は人によって書かれた。同時に、本は人を形作る。
正直に言うと、中学時代はあまり本を読めなかった。往復3時間の通学と、膨大な量の課題に追われる毎日だった。読書時間が取れたのは、通学列車の中と日曜の午後だけだ。
それでも父は、コツコツと本を買い続けてくれた。自分のペースで読書している父の隣で、私は頑張って時間を捻出して、父が選んでくれた本を片っ端から読んでいった。
この記事では、その本棚を左から順番に紹介していく。一冊ずつ、当時の記憶と今の視点を添えながら。
岩波少年文庫:世界文学の入り口
岩波少年文庫は、子どもでも読みやすいように訳・編集された世界文学シリーズだ。文字サイズも行間も程よく、大人が読んでも疲れない。中学生になると青色の背表紙になり、文字が少し小さくなってページ数も増える。本格的な読書の始まりだ。
西遊記・三国志・水滸伝(中国四大奇書)
中国の四大奇書のうち三作だ。「中国の古典はお堅い」というイメージがあるかもしれないが、岩波少年文庫版は驚くほど読みやすい。三国志は英雄たちの知謀と友情の物語で、水滸伝は反骨精神に満ちた豪傑たちの集団活劇、西遊記は奇想天外な冒険譚だ。
これを読んだ後、歴史の授業で「三国時代」が出てきたとき、登場人物に親近感が湧いた。勉強と読書がつながる瞬間だ。
ロビンフッドのゆかいな冒険
12世紀のイングランドを舞台に、義賊ロビンフッドが圧政に立ち向かう冒険譚だ。「シャーウッドの森」という名前は今も頭に残っている。不正に立ち向かう主人公の姿が痛快で、読み終えた後に清々しい気持ちになった。
シェイクスピア物語
ハムレット、マクベス、ロミオとジュリエット、真夏の夜の夢——シェイクスピアの代表作をチャールズ・ラムが散文に書き直した一冊だ。原作の戯曲は台詞中心で読みにくいが、このラム版なら物語として読める。
シェイクスピアが扱うテーマは普遍的だ。嫉妬、野心、愛、裏切り——400年前の作品が今も上演され続けるのは、人間の本質をついているからだと思う。中学生のうちに読んでおくと、後の人生で何度もこの物語の場面が頭によみがえる。
最後のひと葉(オー・ヘンリー)
教科書にも載っている、オー・ヘンリーの短編集だ。「最後のひと葉」は、病気の少女が窓の外のツタの葉が全て落ちたら自分も死ぬと思い込み、老画家がその葉を描いて少女を救う話だ。
初めて読んだときは純粋に感動した。大人になってから再び読むと、老画家の選択の重さがまた違う角度で刺さる。人生経験を積むたびに読み方が変わる作品だ。もっと人生経験を積んでから、また読み直したい。
モンテ・クリスト伯(巌窟王)
アレクサンドル・デュマの大長編だ。無実の罪で投獄された青年エドモン・ダンテスが、脱獄後に莫大な財産を手に入れ、緻密な復讐を遂げる物語。三部作で分量は多いが、一度読み始めると止まらない。
「人生に絶望するには早すぎる」という言葉がある。ダンテスが獄中で13年を耐え、そこから逆転する物語は、どんな苦境にいる人間でも前を向かせる力がある。
ドン・キホーテ
17世紀のスペインで書かれた、世界最初の近代小説とも呼ばれる作品だ。騎士道物語に読みふけった老人が自分を騎士と思い込み、従者を連れて珍道中を繰り広げる。滑稽に見えるドン・キホーテだが、読み進めると彼の純粋さと理想主義が胸に迫る。
後年、東大でこの作品が話題になったとき、「中学で読んだ」と言うと少し驚かれた。教養として持っておくべき一冊だ。
あのころはフリードリヒがいた
第二次世界大戦下のドイツ、ナチスによるユダヤ人迫害の時代を少年の目線で描いた作品だ。フリードリヒという名のユダヤ人の少年と、その隣に住む語り手の「ぼく」との友情が軸になっている。
教科書で「ユダヤ人迫害」という言葉を学んでも、それは記号のままだ。でもこの小説を読むと、フリードリヒという一人の顔と声を持った少年が浮かぶ。歴史とは、無数のフリードリヒたちの話だと気づいた。世界史の理解が一段深まる。
シャーロック・ホームズ
コナン・ドイルが生み出した、史上最も有名な探偵の物語だ。論理的推理と観察力で謎を解くホームズの姿は、科学的思考の教科書でもある。
一度読み始めたら中断できない。「ご飯できたよ」の声も耳に入らないくらい没頭した。寝る前に読むと神経が高ぶって眠れなくなるので注意が必要だ。
レ・ミゼラブル(ヴィクトル・ユゴー)
19世紀のフランスを舞台にした、不朽の名作だ。パンを盗んで19年の刑を受けたジャン・バルジャンが、出所後に人間の善意に触れて変わっていく物語。ミュージカルや映画で有名だが、原作の重厚さはまた別格だ。
この作品で読書感想文を書いた。書きながら、何度も立ち止まって考えた。正義とは何か。法律と道徳はなぜ食い違うのか。答えは今でも出ていない。出ない問いを持ち続けることが、この本を読んだ一番の収穫だと思っている。
王への手紙
オランダの作家トンケ・ドラフトが書いた、騎士道精神に満ちた冒険物語だ。見習い騎士の少年ティウリが、王への秘密の手紙を届けるために危険な旅に出る。
純粋に格好いいと思った。使命を帯びて一人で旅する少年の姿が、何か自分の中にあるものに火をつけた。今でも騎士の物語が好きだ。
古事記物語
日本最古の歴史書「古事記」を子ども向けに書き直した一冊だ。神々の誕生から日本の国土が生まれる話、ヤマタノオロチ退治、因幡の白兎——これらはすべて古事記の物語だ。
日本という国の「原点」に触れる体験だった。外国の文学ばかり読んでいた私には、新鮮な読書だった。
科学者の随筆:理系の文章はなぜこんなに美しいのか
科学と科学者のはなし(寺田寅彦)
物理学者・寺田寅彦の随筆集だ。夏目漱石の弟子でもあり、科学者でありながら優れた文学者でもあった。日常の何気ない現象を科学の目で観察し、それを美しい日本語で綴る。
この本をきっかけに、寺田寅彦の作品を貪るように読んだ。「科学者の文章は論理が完結していて、内容に奥行きがあって、圧倒される」という感覚は、ここから来ている。自分もこういう文章を書けるようになりたいと、初めて思った。
雪は天からの手紙(中谷宇吉郎)
「雪の結晶の研究者」として世界的に知られる物理学者・中谷宇吉郎の随筆集だ。「雪は天からの手紙である」という言葉は、研究への純粋な情熱と詩人の感性が混ざり合った表現だ。
この本を読んで確信した。研究者はロマンにあふれている。科学とは、世界への問いかけだ。答えを出すことより、問いを持ち続けることが大切だと教えてくれた。
ブルーバックス:科学の最前線を一般向けに
ブルーバックスは講談社が出している一般向け科学書シリーズで、図解が豊富で読みやすい。大人も子どもも楽しめる。私が特に良かったと思うのは次の分野だ。
脳と記憶の仕組みに関する本——脳の仕組みを理解すると、日常の勉強に直結する知識が得られる。どう覚えれば定着しやすいか、どのタイミングで復習すれば効率が良いか——私が独学を極めた理由の一つは、脳科学に基づいた勉強法にこだわったからだ。
数学・研究生活の本——数学の面白さを語った本は、受験数学とはまったく違う数学の顔を見せてくれる。数オリに取り組んでいた頃と同じ、パズルを解くような楽しさを感じた。
追加でおすすめしたい本
車輪の下(ヘッセ)
ノーベル文学賞作家ヘルマン・ヘッセの自伝的小説だ。神童と期待された少年ハンスが、過度な受験勉強と周囲の期待に潰されていく物語。
受験を経験した人間が読むと、痛みを伴う作品だ。「車輪の下」とは、社会という巨大な歯車に押しつぶされることを指す。勉強することの意味を、改めて問い直させてくれる。
星の王子さま(サン=テグジュペリ)
「大切なものは目に見えない」という言葉で知られる名作だ。砂漠に不時着した飛行士が出会う小さな王子の物語で、表面上は童話だが、大人が読んでこそ深みがわかる。
「おとなは、数字が好きだ」という一節が、中学生の頃の私に刺さった。成績や偏差値ではなく、自分の「好き」を大切にしてほしいというメッセージが、父の子育て哲学と重なった。
人間失格(太宰治)
日本近代文学の問題作だ。社会に適応できない主人公・大庭葉蔵の告白形式で綴られる。暗い、と言う人もいるが、自分の内側の弱さと向き合うことの誠実さが、この作品の核心だと思っている。
中学・高校で一度読んでおくべき作品だ。自分のどこかにある「弱さ」に名前がつく体験ができる。
銀河鉄道の夜(宮沢賢治)
宮沢賢治が生前未完のまま残した、幻想的な作品だ。ジョバンニとカンパネルラが銀河鉄道に乗って旅をする物語で、生と死、友情、自己犠牲が美しい言語で描かれる。
宮沢賢治は農学校の教師をしながら、詩・童話・科学を生涯追いかけた。文学と自然科学を同時に愛した人物として、今でも憧れる。
中学生に読んでほしい本、2つの理由
世界文学と科学書——この2種類を中学のうちに読んでおくことを強くすすめる。
文学作品は、時間に余裕のある今でないと読めない。大人になってからでは、まとまった時間を取るのが難しくなる。それに、同じ本でも年齢によって受け取るものが変わる。中学・高校の純粋な感性で読んだ体験は、その後の人生で何度もよみがえってくる。
科学書は、好きな分野から入ればいい。自分の好奇心が向かう方向に本を選ぶ。それだけで、学校の理科とは違う「科学の面白さ」に出会える。
本は、著者と読者が時代を超えて対話する場所だ。何百年前に生きた人間の思考が、今の自分の頭の中で動き出す。それが読書の醍醐味だと思っている。





コメント