【東大生おすすめ】子供の頃に読んだおすすめ本を一挙紹介|岩波少年文庫・児童文学作品を思い出とともに語る【小学生向け】

【東大生おすすめ】子供の頃に読んだ本を一挙紹介|岩波少年文庫・児童文学作品を思い出とともに語る【小学生向け】
本はずっと心の奥底で生き続けている。
今でもそう思う。子どもの頃に読んだ物語の場面は、大人になってからも思いがけない瞬間によみがえる。登場人物の言葉が、自分の言葉のように口をついて出ることがある。本とはそういうものだ。
この記事では、実家の本棚に残っている小学生向けの児童文学を、思い出とともに紹介する。
父と本棚と、私
毎朝の登校前1時間を読書タイムにしていた。
本は父が買ってきてくれた。私が1冊読み終わると、次の1冊が本棚に増えている。その繰り返しだった。父は同じ本を並行して読んでいたので、「昨日どこまで読んだ?」という会話が毎朝あった。学校に行っている間に父が一気に読み終えてしまうことも多かった。
笑ってしまうほど質素な家庭だったが、本だけは学校一番を名乗れるくらいあった。それでよかった。それがよかった。
岩波少年文庫
岩波少年文庫は、世界の名作を子ども向けに訳・編集したシリーズだ。シンプルな装丁で挿絵も統一されており、本棚に並べると一体感がある。父は訳者あとがきまで読んでいたが、子どもの頃の私には物語本文だけで十分だった。大人になってから読み返すと、あとがきの深みがようやくわかる。
グリムの昔話(全3巻)
19世紀ドイツのグリム兄弟が各地に伝わる民話を収集・整理した説話集だ。「ラプンツェル」「灰かぶり」「ヘンゼルとグレーテル」——誰もが知る物語の多くがここに収まっている。スイスの版画家ホフマンが選び抜いた101話に、四色の見事な挿絵が添えられている。
グリム童話の原典は、実は現代の子ども向けよりずっと暗く残酷な話が多い。岩波版はそのバランスをうまく保っている。物語の向こう側に、農民が抱えていた恐怖と希望が透けて見える気がする。
少年動物誌(河合雅雄)
霊長類学者・河合雅雄が少年時代を過ごした兵庫県篠山を舞台に、動物たちとの交流を描いた短編集だ。モルモットが増えすぎる話、タヒバリを追い続ける話——自然の中で生きることの豊かさが、静かな筆致で綴られる。
読んだ後、篠山に一度本気で行こうと思ったほどだ。著者の弟は「心の処方箋」で知られる河合隼雄——兄弟そろって京大出身のこの家族に、一種の憧れを感じた。この本がきっかけで福音館文庫を好きになった。
ナルニア国物語シリーズ(C.S.ルイス)
1950年代にイギリスで書かれた7巻の児童文学シリーズだ。第二次世界大戦中に疎開した4人きょうだいが、衣装だんすを通じてナルニアという異世界に迷い込む。白い魔女が支配する王国で、正義のライオン・アスランと共に戦う物語だ。
著者C.S.ルイスはオックスフォード大学の文学者で、「指輪物語」のトールキンと友人だった。表面上はファンタジーだが、その奥底には深い思想が流れている。押入れやクローゼットを開けるたびに、この向こう側があるかもしれないと思うようになった。それが児童文学の魔法だ。
クローディアの秘密(カニングズバーグ)
退屈な日常に嫌気がさした少女クローディアが、弟を誘ってメトロポリタン美術館に家出し、そこで美術品にまつわるミステリーに巻き込まれる物語だ。ニューベリー賞受賞作。
「一角の人間になりたい」というクローディアの願いが、物語全体を貫いている。思春期の入口にいる子どもが読むと、何か大切なものが響くはずだ。なぜか読んでいる途中で、クラスの女の子の顔が浮かんだのを覚えている。
やかまし村の子どもたち(リンドグレーン)
スウェーデンの作家アストリッド・リンドグレーンが描く、小さな村での子どもたちの日常だ。家が3軒しかなく、子どもは6人だけの「やかまし村」で、秘密の手紙をやりとりしたり、かくれ小屋を作ったりして遊ぶ。
この本を読んでから、空き地の秘密基地作りの名案が次々と浮かんだ。実際に立派な基地を作った。本が現実の遊びに影響を与えた体験だ。
飛ぶ教室(ケストナー)
20世紀ドイツの作家エーリッヒ・ケストナーが書いた、寄宿学校を舞台にした物語だ。個性豊かな少年5人が、クリスマス前の冒険と友情を繰り広げる。
外国の寄宿学校ってどんな感じだろうと、読みながら思い描いていた。1日だけでもいいから、そこで過ごしてみたい。本が疑似体験の場所になる感覚を、この本で初めて強く感じた。
エーミールと探偵たち(ケストナー)
同じくケストナーの作品。列車の中で大切なお金を盗まれた少年エーミールが、ベルリンの街で偶然知り合った子どもたちと知恵をしぼって犯人を追う冒険談だ。
子どもたちが大人の助けを借りずに問題を解決する構図が痛快だった。自分たちで考えて動くことの面白さを、この本から学んだ気がする。

トムは真夜中の庭で(フィリパ・ピアス)
カーネギー賞を受賞したイギリスの名作だ。古時計が真夜中に13回打つと、昼間には存在しなかった庭が現れる。トムはそこでヴィクトリア時代の少女ハティと出会い、時間を超えた友情が生まれる。
「時間」という抽象的なテーマを、これほど感覚的に描いた作品は他にない。私は素直でお利口さんな子どもだったから、ルールを破って夜中に庭へ出るという行為に、どこか羨ましいものを感じていた。
アンデルセン童話集
デンマークの作家ハンス・クリスチャン・アンデルセンが19世紀に書いた童話集だ。「みにくいアヒルの子」「皇帝の新しい着物」「おやゆび姫」——グリム童話と並んで世界中の子どもに親しまれている。
グリム童話が民話の収集なのに対し、アンデルセンの物語はほぼすべて自作だ。それだけに、孤独や差別への眼差しが鋭い。「みにくいアヒルの子」は、アンデルセン自身の半生を重ねた自伝的な作品だと知ったのは大人になってからだ。
星の王子さま(サン=テグジュペリ)
1943年にフランスで出版され、世界で最も多くの言語に翻訳された作品のひとつだ。サハラ砂漠に不時着した飛行士が出会う小さな星の王子の物語で、「大切なものは目に見えない」という言葉が世界中に響いた。
薄いのですぐに読み終わった。不安になって直後にもう一度読み直した。それでも物語の真髄を読み解けないまま、今でも時々ページを開く。「おとなは、数字が好きだ」という一節が、子どもの頃から頭に残っている。
たのしい川べ(グレアム)
20世紀初頭のイギリスで書かれた、川辺に暮らすネズミやモグラ、ヒキガエルたちの田園ファンタジーだ。作者ケネス・グレアムはイングランド銀行の職員で、息子に語り聞かせた話を書き留めた作品だ。
何度読み返したかわからない。この本と出会ってからヒキガエルを見たら挨拶するようにした。動物が主人公の物語の中で、特に好きな一冊だ。「がまくんとかえるくん」に似た温かさがある。
アラビアン・ナイト
中東・インドの説話集で、「千夜一夜物語」とも呼ばれる。シンドバッドの冒険、アラジンと魔法のランプ、アリ・ババと四十人の盗賊——世界中に知られる物語がここに収まっている。
「アラビアン」「ナイト」という言葉の響き自体に惹かれていた。砂漠と宝石と魔法——昆虫少年には縁遠い世界だったが、だからこそ夢中で読んだ。
ホビットの冒険(トールキン)
「指輪物語」で知られるJ.R.R.トールキンが、子ども向けに書いたファンタジーだ。臆病で平和好きなホビット族のビルボが、竜に奪われた財宝を取り返す旅に出る。
これがきっかけで「指輪物語」全7巻も読んだ。トールキンはオックスフォード大学の言語学者で、この物語のために独自の言語を作り上げた人物だ。学問と創造が一人の人間の中で混ざり合っていることに、後になって気づいた。
モモ(ミヒャエル・エンデ)
ドイツの作家ミヒャエル・エンデが1973年に発表した傑作だ。不思議な少女モモが、人々の時間を盗む「灰色の男たち」と戦う物語で、現代社会への鋭い批評が童話の形で包まれている。
3本の指に入る。何も言うことがない傑作だ。小学校と中学校、2回の読書感想文でこの作品を選んだ。コロナ禍で「時間とは何か」が問い直されたとき、この本が再注目されたのは必然だと思う。
はてしない物語(ミヒャエル・エンデ)
「モモ」と同じエンデの作品で、1979年発表の代表作だ。いじめられっ子の少年バスチアンが古書店で見つけた本の世界に引き込まれ、物語の中の主人公と現実のバスチアンの物語が入れ子構造で展開する。
夕暮れに気づかないまま薄暗い部屋で読み続けた。近視が進んだのはこの時期だと思っている。物語の中に物語がある構造が面白くて、読んでいるうちに自分も本の中に引き込まれていく感覚があった。
ドリトル先生シリーズ(ロフティング)
20世紀初頭のイギリスで書かれた、動物語が話せる医者ドリトル先生の冒険シリーズだ。作者のヒュー・ロフティングが第一次世界大戦の塹壕から子どもたちへ送った手紙が原型になっている。
動物と冒険という、少年の心をわしづかみにする要素が詰まっている。こんな人生を送れたらどんなに楽しいだろうと、読むたびに思った。今でも淡い期待を抱いているかもしれない。
宮沢賢治シリーズ(風の又三郎・銀河鉄道の夜・注文の多い料理店)
宮沢賢治(1896-1933)は岩手県出身の詩人・童話作家で、農学校の教師をしながら独自の文学世界を作り上げた。彼の作品には自然科学への深い愛着と、人間への温かいまなざしが同居している。生前はほとんど認められず、37歳で亡くなった後に再評価された。
賢治の文章は感性豊かで、読んでいると心の底まで揺さぶられる。「銀河鉄道の夜」は未完のまま遺された作品で、だからこそ余白が大きく、読む者の想像力が自由に動ける。高校になっても折に触れて読み返していた。文学と科学を同時に愛した人間として、今でも憧れる。

追加でおすすめしたい本
小公女(バーネット)
「秘密の花園」で知られるフランシス・ホジソン・バーネットの作品だ。裕福な少女セーラが父の死によって没落し、屋根裏部屋で召使いとして働かされながらも、想像力と誇りを失わずに生きる物語だ。
境遇がどれほど変わっても「公女のように振る舞う」というセーラの言葉が、子どもの頃の私の心に残った。外側の条件ではなく、内側の態度が人を作るという考え方が、ここから来ているかもしれない。
床下の小人たち(ノートン)
イギリスの作家メアリー・ノートンが書いた「借りぐらしのアリエッティ」の原作だ。家の床下に住む小人一家ポッドたちが、人間の家から物を「借りて」生活する話で、スタジオジブリ作品の原作として知られる。
日常の見え方が変わる本だ。床下や壁の中に、誰かが暮らしているかもしれない。そういう想像をする癖がついた。
あしながおじさん(ウェブスター)
20世紀初頭のアメリカ文学。孤児院で育った少女ジェルーシャが、顔も名前も知らない奨学金提供者「あしながおじさん」への手紙形式で綴られる成長小説だ。
正直に言うと、動物が出てこない物語はあまり得意ではなかった。でも、書簡体という形式が面白かった。手紙の文章だから、自然と語りかけるような文体になる。それが親しみやすさを生んでいた。
最後に
子どもの頃に読んだ本は、投資対効果が最も高いものの一つだと思っている。
父はお小遣いが月5000円だったようで、自分のものはほとんど買わなかった。それでも私には本や図鑑をたくさん買ってくれた。今になって、あの本棚がどれほど大切な財産だったかがわかる。
読書は記憶の貯蔵庫を作る作業だ。今すぐ役に立たなくていい。何年後か、何十年後かに、ある場面やある言葉が突然よみがえって、そのときの自分を支えてくれる。
本はずっと心の奥底で生き続けている。





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