電車通学の勉強法|往復4時間通学した灘高・東大卒が教える時間の使い方

電車が駅を出た瞬間、僕の勉強が始まった。
次の駅に着くまでに、この問題を終わらせる。扉が閉まる音がスタートの合図だった。ストップウォッチは持っていなかったが、電車そのものがタイマー代わりだった。
灘高時代、僕は片道2時間・往復4時間の通学をしていた。途中に大きな乗り換え駅が一つ、その前後にも小さな乗り換えがあり、乗り換えが頻繁に続く路線だった。決して楽な通学ではなかった。でも今振り返ると、あの時間が独学の核になっていたと思う。
この記事では、その経験をもとに、電車通学の時間を「死に時間」から「学習の時間」に変える方法を書く。
通学時間は「復習のゴールデンタイム」だ
まず前提として一つ伝えておきたいことがある。
電車の中は、新しいことを学ぶ場所ではない。復習する場所だ。
記憶研究では「間隔反復(spaced repetition)」と「想起練習(retrieval practice)」が最も効果的な学習法として知られている。一度学んだことを、少し時間を置いてから思い出そうとすることで、記憶が深く定着する。電車の中でこれをやるのが理想だ。
机の前で新しい内容をインプットし、移動時間にそれを引き出す。このサイクルが、独学の効率を大きく上げる。
灘高時代|往復4時間の通学で僕がやっていたこと
座れないとき|英語リスニング
朝は座れないことが多かった。ラッシュの車内で本を広げるのは現実的ではない。目を使った勉強は、満員電車では体への負荷が高い。
そこでやっていたのが英語のリスニングだ。ノイズキャンセリングイヤホンを使い、耳から英語を流し込む。混雑した車内でも、耳だけは自由だ。
リスニングは単なる「聴き流し」ではなく、内容を意識して聴くことが重要だ。「この文の構造はどうなっているか」「知らない単語が出てきたか」を頭の中で追いかけながら聴くと、受動的なインプットではなく能動的な学習になる。
座れたとき|英単語・古文単語・雑誌のコピー
座れた日は、英単語帳か古文単語帳を開いた。どちらも「見開き数ページ」で区切りがつくため、乗り換えの多い路線でも扱いやすい。
それ以外に持ち歩いていたのが、National Geographic (英語版)の記事のコピーと、東京出版「大学への数学」の全ページコピーだ。どちらも原本を持ち歩くには重い。コピーして小分けにし、その日の区間に合わせて分量を調整していた。
National Geographicは科学・自然・地理を扱う本格的な英文で、受験英語とは異なる実践的な語彙が身につく。「大学への数学」は数学的思考の密度が高く、じっくり読むだけでも力がつく。どちらも通学中に消費するには最適な分量だった。
電車とスピードを競う
中学時代(片道1時間半・往復3時間)は、宿題を電車の中で片づけていた。比較的座れることが多く、プリントや問題集を広げられた。
このとき僕がやっていたのが、「駅間ゲーム」だ。電車が駅を出発した瞬間、「次の駅に着くまでにここまで終わらせる」という目標を立てる。長い区間では分量の多い問題を、短い区間ではさっと終わる暗記ものを。電車のスピードと自分の勉強スピードを競うような感覚で進めていた。
ストップウォッチは要らない。電車そのものがタイマーだ。
これは脳科学で言う「締め切り効果」そのものだ。制限時間が迫っているとき、人間の集中力は最大化する。塾の自習室で1時間ぼんやり解くより、電車の10分間の方が密度が高いことがある。
通学時間に向いている勉強・向いていない勉強
何でも電車でやればいいわけではない。向き・不向きがある。
| 適性 | 内容 |
|---|---|
| ◎ 最適 | 英単語・古文単語・漢字・一問一答・歴史の流れ・理科の暗記・リスニング・前日の復習 |
| △ 条件付き | 英文読解(座れて静かな区間)・数学の解法確認(短問題)・化学の理論(図表が少ない範囲) |
| × 不向き | 難しい数学の計算・記述問題・長文読解・過去問演習 |
机でやるべきことを無理に電車でやる必要はない。電車でできることに集中し、家に帰ったら机でしかできないことだけをやる。この分業が、勉強の密度を上げる。
長時間通学は本当に不利なのか
「往復4時間の通学は大変ではなかったか」とよく聞かれる。正直に言う。大変だった。もし人生をやり直すなら、近い学校を選ぶかもしれない。
でも、通学時間をうまく使えば話が変わる。
1日2時間の通学時間を学習に使えば、年間200日の通学として400時間になる。英単語だけでも、1日30個×200日で6000語に達する。これは偶然ではなく、設計だ。
通学時間は「我慢する時間」ではない。設計次第で「未来への投資時間」になる。
疲れた日は寝ていい
一つだけ付け加えておく。
疲れた日は、無理に勉強しなかった。目を閉じて休んだ。それも大事なことだ。
睡眠や休息は、翌日のパフォーマンスに直結する。消耗した状態で単語帳を眺めても、記憶には残らない。「今日は休む」と判断できることも、長期戦を生き抜く力だ。
乗車前に「何をするか」を決めておく
最後に一つ、最も実践的なアドバイスを伝える。
電車に乗ってからカバンをごそごそ探すのをやめることだ。「今日の電車では単語帳の105ページから120ページをやる」と決めて、その本を取り出しやすい場所にセットしてから家を出る。乗車した瞬間に迷わずスタートできる仕組みを作る。
「何をやろうか」と考えている間に駅に着く。その繰り返しが、1年で数百時間の差になる。





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