本屋を歩くと人生が変わる|灘・東大卒が書店・図書館で見つけた本棚の記録

本屋が好きです。
紀伊國屋書店には、学生時代から何度も通いました。灘高時代も、東大時代も、今、塾を運営している今も変わりません。塾の近くの書店にも、時間があればふらりと立ち寄ります。
Amazonで簡単に本が買える時代になりました。それでも、本屋に足を運びたくなる時があります。
目的の本を探すためではありません。偶然の出会いを楽しむためです。
予定していなかった一冊との出会いが、人生を変えることがあります。
この記事では、書店を歩いて見たこと、感じたこと、そして実際に手に取ってきた本を紹介します。単なる読書感想ではありません。灘高・東大を経て、独学を続けてきた一人の人間の「本棚の記録」です。
学参エリア——良書はひっそりと佇んでいる
書店に入って、まず向かうのは教材コーナーです。
この10年で、教材売り場の様子は大きく変わりました。小学生〜中学生向けの教材はガラリと変化し、デザインも中身も二極化しています。装飾が派手なものと、質実剛健なもの。この2つに分かれています。
回転の早いものは平積みされ、長く愛されているものは奥に追いやられています。私が普段おすすめしている東京出版の教材なども、いちばん目が届きにくい場所にひっそりと並んでいました。本当の良書って、目立つ場所にはないんですよね。
小学低学年におすすめ:はなまるリトル(四谷大塚)
これほど完成度の高い教材はないと思います。解説を見ればわかります。「この問題は小学1年生には難しいかもしれませんが、こう考えると理解しやすいです」というように、指導者・保護者へのメッセージがたくさん入っている。最高の自学自習用教材です。万人におすすめできます。
中学受験生におすすめ:自由自在
四谷大塚の予習シリーズを一冊に凝縮したような網羅性があります。要点チェックと演習問題が両方用意されているので、教科書がわりに使えます。似た立ち位置の教材に「総合的研究」がありますが、小学生用は内容がやや薄く、入門向けという印象です。一方で中学生用の「総合的研究」は中身がしっかりしていて、パーフェクトコースよりも優秀だと感じています。小学生用にもこのレベルの作り込みを期待したいところです。
洋書コーナー——多読への入り口
洋書コーナーに力を入れている書店は、それだけで好印象を持ちます。手作りの説明板があったりすると、なお嬉しくなります。
私の家庭ではペンギンリーダーズを使っていました。レベル別に分かれていて、文字が見やすく、イラストもシンプル。中学1年生に上がる頃、家にあったペンギンリーダーズを片っ端から読み始めたのを覚えています。
そして最近、その対抗馬を見つけました。ラダーシリーズです。
日本で作られたシリーズで、巻末に単語帳が付属しています。この単語帳が極めてしっかりしていて、収録語数はペンギンリーダーズの10倍以上ある印象を受けました。チェックボックスもついていて、単語を習得していく使い方ができます。価格も文字の大きさもほとんど同じなのに、単語帳にこれだけ力を入れている。好感が持てました。今選ぶなら、私はラダーシリーズを選びます。
子どものうちに英語多読をしていたら、人生変わっていただろうな。これは私が今でも後悔していることのひとつです。
児童文学コーナー——岩波少年文庫の安心感
児童文学のコーナーでは、岩波少年文庫をおすすめします。
作りが真面目です。手を抜かずに選ばれた作品が揃っていて、翻訳者もその道のプロばかり。安心して子どもに渡せます。中でも『モモ』は、あまりに有名な一冊ですが、「時間とは何か」を、忙しい大人にこそ読んでもらいたいと思っています。
余談ですが、紀伊國屋書店の児童文学コーナーより、私の家の本棚の岩波少年文庫の方が所蔵数が多いという瞬間がありました。これには自分でも驚きました。
科学道コーナー——自然と数字への入り口
「科学道」と読むこのコーナーが好きです。
自分がこれまで読んできた本がたくさん紹介されていて、見るたびに嬉しくなります。科学好き、自然好きな子どもに育てたい方には、ここで紹介する3冊は購入を強くおすすめします。父が買ってくれた本、私が実際に読んできた本です。
『センス・オブ・ワンダー』(レイチェル・カーソン)
自然に対する感覚が磨かれます。大切なものを思い出させてくれる一冊です。全国民に読んでもらいたいと思っています。
『50の自然体験』
『センス・オブ・ワンダー』で感覚を磨いたあとは、この本を読んで実際に行動に移してほしいです。感じることと、やってみることはセットです。
『数の悪魔』
小学校高学年の頃、よく読んでいました。出てくる数の話を、片っ端からノートに書き写していたのを覚えています。算数を好きにさせてくれるのは、問題集ではなく、こういう読み物なんですよね。
新書・実用書コーナー——「今」を考えるための本
書店で必ず立ち寄るのが、新書と実用書のコーナーです。
随筆や骨太な思想書は図書館で借りることが多いのですが、新しく出た本、今すぐ役に立つ本は、書店で見つけてすぐに読みたい。だからこのコーナーは欠かしません。
『スマホ脳』(アンデシュ・ハンセン)
勉強したいと思っている中学生・高校生には、特にこの本を読んでほしいです。スマホがどれだけ脳の機能を奪っているかが、データとともに示されています。これを読むと、スマホに時間を奪われている状態がいかに損なのかが腹に落ちます。読むこと自体が、スマホから距離を取るきっかけになる。そんな逆説的な効果を持つ一冊です。
『独学大全』(読書猿)
独学のための技法が、これ一冊に詰め込まれています。分厚いですが、辞書のように使う本です。すべてを実践する必要はありません。自分に合いそうな技法を見つけて、ひとつずつ試してみる。独学を続けてきた人間として、ここに書かれている多くのことを、自分も無意識にやっていたと感じました。独学を志す高校生・大学生にすすめたい一冊です。
『AIに負けない子どもを育てる』(新井紀子)
立ち読みでしたが、内容には頷くことが多かったです。AIが何をできて何をできないのかを、教育の視点から丁寧に解説しています。「読解力」というキーワードの重要性が、今の時代にこそ刺さります。保護者の方に特におすすめします。
図書館で読む本——時間をかけて向き合う一冊
新刊や実用書は書店で。随筆やエッセイなど、じっくり読み応えのある文章は、図書館で借りるようにしています。
東京で暮らしていた頃、23区西部の区立図書館はすべて回りました。図書館を巡るのが好きでした。同じ本でも、図書館によって置かれている版が違ったり、隣にある本が違ったりする。その違いを見るのも、ひとつの楽しみでした。東部もいつか、少しずつ制覇していきたいと思っています。
『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎)
1937年出版の古典です。戦前に書かれた本でありながら、今読んでも古びていません。受験や学歴以上に大切なものがある。そんな当たり前のことを、静かに思い出させてくれます。中学生・高校生、そして保護者の方にも読んでほしい一冊です。
『サピエンス全史』
人類の歴史を一気に俯瞰できる本です。受験勉強で覚える歴史の年号や出来事が、もっと大きな流れの中でつながっていく感覚があります。歴史が「暗記科目」から「物語」に変わる体験ができる一冊です。
本当に気に入った本だけは、自分で買う
図書館で借りた本の中で、「これは手元に置いておきたい」と感じた本だけは、後で自分で購入するようにしています。
その一冊が『森の生活』(ヘンリー・デイヴィッド・ソロー)です。
自然の中で生きることの意味を、静かに、しかし強く問いかけてくる本です。虫取りや山歩きばかりしていた子ども時代を思い出しながら読みました。何度も読み返したくなる本というのは、こういう本のことだと思います。
本屋と図書館で、人生は変わる
最近は、YouTubeやSNSから情報を得ることが増えました。それ自体は悪いことではありません。
ただ、アルゴリズムは「自分が好きそうなもの」ばかりを見せてきます。一方で、書店と図書館には偶然があります。自分では選ばなかった本。興味もなかった分野。そんな一冊との出会いが、人生を大きく変えることがあります。
私自身、紀伊國屋書店を歩いていて、たまたま手に取った本によって、進路や考え方が変わったことが何度もありました。
受験勉強も大切です。しかし、たまには参考書売り場を離れて、科学や歴史、哲学の棚をゆっくり歩いてみてください。そこには、まだ知らない世界が広がっています。
人生を変える一冊は、案外そんな場所で、静かに待っているのかもしれません。





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